FOCUS 誌 ビル・ゲイツ インタビュー :
マイクロソフトのコードに (MS が気にするような) バグはない

FOCUS Magazine Interview with Bill Gates:
Microsoft Code Has No Bugs (that Microsoft cares about)

このインタビューで“偉大なるビル”は取り乱し、彼の忠実なる顧客、 つまりあなたに対する軽視をあらわにした。

Slashdotのみなさんへ: はい、これは本物です。

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ドイツの週刊誌 FOCUS (nr.43, October 23,1995, p. 206-212) による インタビューのなかで、マイクロソフトのビル・ゲイツ氏は同社製品の 品質についていくつかのことを述べている [下の まとめ をご覧いただきたい]。PC がどのようにあるべきで、それはどう使われうるか に関する長い質問のあと (明らかに彼が好まないような質問に対する、ゲイツ氏の 怒りもいくらかあったが)、インタビュアーはマイクロソフト製品が 要求しているディスク容量の話をはじめた。この対話は以下のような口論で終わっている:


FOCUS:
あるソフトウエアの新しいリリースがでるたびに、 古いものよりバグが減ってはいますが、一方でそれはより複雑になり、 機能も多くなっているわけで…

ゲイツ:
ちがうよ、売れそうなものが付くというだけだよ!

FOCUS:
しかし…

ゲイツ:
売れそうなものが付くだけ! ぼくらは売れそうだと思わない限りは どんなことがあってもソフトウエアなんか作りはしない。 それがぼくたちがソフトウエアをやっている理由のすべてだ… 自分でもおどろくくらいだ。 ぼくたちはそれが顧客の望んでいるものだと思うから作るんであって、 ぼくたちは自分のすべきことをしているんだ。

FOCUS:
けど一方では … あなたはこう言いますよね…「オーケイ、みんな。 もしこの新機能を気にいらないなら、古いバージョンにしがみついているがいいさ、 バグつきでね」と?

ゲイツ:
ちがう! ぼくらにはほんとに沢山の競争相手がいるんだよ。 新しいバージョンだって、それはバグを直すわけじゃない。ぼくらが新バージョンを出すのは、 そんな理由じゃない。

FOCUS:
けど、どのバージョンにもバグがありますよ、 みんながほんとに直してもらいたいと思っているような。

ゲイツ:
ちがうって! ぼくらがリリースしたソフトウエアには、多勢の ユーザが直してほしいと思ってるような重大なバグなんてない。

FOCUS:
おー・まい・ごっど。 私はいつも自分のコンピュータで MS Word が 文書のページ番号を飲みこんでしまうのに頭に来てますよ。 2、3回はページ番号つきで印刷したのに。私が不満をいうとみんな 言うんです。「ああ、バージョン 5.11 から 6.0 に変えたほうがいいよ」って。

ゲイツ:
ちがうって! もしきみがそれを本当にバグだと思ってるのなら バグを報告すべきだ。もしかすると、 きみは適切に使ってないんじゃないか? このことを考えたことがあるかい?

FOCUS:
ええ、それは…

ゲイツ:
ラッダイト主義者 (訳注1)は ソフトウエアを適切に使う方法を知らないということがわかった。 よく調べなくちゃいけないよ。 -- ぼくらが新しいバージョンを 出すのはバグを直すためなんかじゃない。絶対にちがう。 そのために新しいバージョンを買うなんてのは、ぼくが聞いた中でも一番バカな理由だよ。 ぼくらが新しいバージョンを出すときは、 その中にみんなが望んでる新しいことをたくさん詰めこんでるんだ。 だから、安定性こそが新しいバージョンに移行する理由だなんてことは 絶対にありえない。そんな理由があるわけない。

FOCUS:
それじゃこれはどういうわけなんですか、私はコンピュータベンダーから こう言われ続けてるんですよ。「ああ、そのバグについては 我々も承知しています、次のバージョンが出るまで待ってください、 そのときは修復されているでしょう」って。こういう事はしょっちゅう聞いてます。 もしソフトウエアに重大なバグは何もないし、そうすれば 新しいバージョンにする理由がないとおっしゃるのでしたら、 これはどうなるんです?

ゲイツ:
いや、ぼくはこう言っているんだ。 ぼくらはバグを直すために新しいバージョンを出すんじゃない。 そうじゃないんだ。それじゃ十分な数の人が買ってくれない。 マイクロソフト Word を使ってる人を多勢つれてきてごらん。 そして彼らに向かって「あなたがたはバグのために新バージョンを 買っていますか?」と聞いてみるといい。誰ひとりとして、バグのために 新バージョンを買う人なんていないよ。そんな理由じゃ リリースは全然売れなくなっちゃうからね。

FOCUS:
たぶんあなたは自分のソフトウエア開発者たちと別の接触があるんでしょう。 けれど、もし誰かが私のように販売店やサポートに電話して 「おい聞いてくれ、バグがあるぞ」と言ったら、 90パーセントくらいは「ああ、ええと、はい、 そんなにひどいものではありません、次のバージョンまでお待ちください。 そうすれば修復されますから」という答えが返ってくると思いますよ。 世の中ってそういうものでしょう。

ゲイツ:
毎年ぼくらが電話応対のためにいくら使ってると思う。

FOCUS:
はあ、2〜300万ドルですか?

ゲイツ:
年 5億ドルだよ。ぼくたちはこの電話を全部とって、 それらを分類してる。これが次のバージョンでぼくらのすることのインプットになってるんだ。 だからこれは世界最大のフィードバック・ループみたいなものだよ。 人々は電話する - そしてぼくたちは何をすべきかを知るというわけだ。 こういった電話のうち、何パーセントがソフトウエアのバグに関するものか知りたいかい? 1パーセント以下なんだ。

FOCUS:
では人々は電話してきてこう言うんですか? 「おい聞いてくれ、 あれやこれやの機能がほしいぞ」って。

ゲイツ:
実際のところ、それは 5パーセントぐらいだ。ほとんどの人は あることをそのソフトウエアでどうやってするのか、アドバイスを聞きに電話してくる。 基本的なことはそれだ。ぼくらは座って、これらの電話を聞く。 そういうのは本当にたくさんたくさんあるよ。 それ (バグのこと) は統計的には重要じゃない。じっと座って、 Win 95 の窓口に耳を傾ける。座って Word の窓口に耳を傾ける。 そして待つ。何週間も何週間もひたすら待ちつづけると誰かが 電話してきて言う。「ねえ、これはバグだと思うんだけど」…

FOCUS:
では、すべての PC ユーザが共通に感じる、 このフラストレーションはどこからくるんでしょう? 動くはずのものが単に動かないということを、 誰もが毎日体験してますよ。

ゲイツ:
それは、バグについて話すのがクールだからだよ。それは、 「ああ、あるよねー…そうそう、そのバグ知ってるよ」というようなことだ。 ぼくはこの現象は社会学的なもので、技術的なものではないと理解してる。


まとめ:

つまり…

もっとも信頼できる筋より。

より詳しい情報はこちら…(英語)


(すべてのソフトウエアがマイクロソフトのもののように不安定なわけでは ない。たとえば PC で走っている Linux はしばしば何ヶ月も走りつづける。その間、リブートを必要とする いかなる理由もなく)

訳注 1. 英国の労働者ラッダイト (Luddite) は雇用の減少をおそれ、工場の機械を破壊した。 転じて「ラッダイト主義者 (Luddites)」は一般に技術革新を嫌う人々をさす。

このページの文章は RISKS アーカイブから取り出したものである: <http://catless.ncl.ac.uk/Risks/17.44.html>
これは生のインタビュー記録で (雑誌の記事はドイツ語で掲載されている)、 インタビュアー Dr. Jürgen Scriba 氏のご好意により提供していただいた。 先頭にある導入部分の文章は Klaus Brunnstein 氏によるものである。これは <http://catless.ncl.ac.uk/Risks/17.43.html> にある (Drs. Scriba, Brunnstein, Neumann, および この文書を使わせてくれた Marshall、 イタリア語版の翻訳をしてくれた Michele Beltrameスペイン語版の翻訳をしてくれた Iñaky Peréz Gonzáles の各氏に多大なる 感謝 をささげる)。

日本語訳: 新山 祐介

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